「女性だけのチーム」はいらない 「女性活躍推進」は誰のため?《公式》
大塚和成です!!
11/29(木) 14:23配信 日経BizGate
「女性だけのチーム」はいらない 「女性活躍推進」は誰のため?
女性活躍推進は女性のためではない、と言ったらおかしいでしょうか?
女性活躍推進は女性のためではない、と言ったらおかしいでしょうか? しかし、これは事実です。女性に限らずすべての人にとって働きやすい組織をつくるためのきっかけが、女性活躍推進なのです。
(※連載の5回目です。バックナンバーは画面下の【関連記事】から)
■女性だけのチームはいらない
女性活躍推進のための取り組みというと、「女性だけのチームをつくる」というアイデアが出てきます。実際そのようなアクションをとった企業はたくさんあり、新聞記者からも、それらのニュースについてコメントを求められることがあります。私たちは前向きなコメントをすることができないので、たいていはコメント部分はボツになってしまいます。
■解決策というより回り道
確かに女性ばかり集めれば、今までとは違うイメージを打ち出せるかもしれませんし、必然的に女性をリーダーにすることもできます。経営陣からすれば「新しい対策を打ち出した」という実感も得られるでしょう。しかしそれでは、「当社では女性活躍がまったく進んでいません」と広報しているように見えてしまいます。
第3回のクォータ制のところで説明したように、片方の性が一定比率を切らないようにするということが大事なのであって、女性ばかりの世界をつくることが狙いなのではありません。ベンチャー企業で女性が経営者の会社では、従業員がほとんど女性という会社もありますが、それが業種特性であったとしても、早い段階で不具合が生じて、男性社員を採用することになるものです。
世の中には男と女が半分ずついます。そして性別の違いからくる差もあります(能力が高いとか低いとかではありません)。社会においても、職場においても、男女が協力し合いながら活動することによって得られる成果が大きいのです。
「女性だけのチーム」はいらない 「女性活躍推進」は誰のため?
図1 ダイバーシティの4段階
男性や女性ばかりのチームよりも、男女混合チームのほうが、高いパフォーマンスを上げたという研究結果は数々あります。図1は早稲田大学の谷口真美教授が示した、ダイバーシティに対する企業行動の段階です。この図にあるように、目標とすべき段階は、男女の違いを活かし、競争的優位につなげる道を、戦略的に採用する段階(統合のステージ)です。
女性だけのチームをつくるという方法は、せいぜい「同化」から「分離」に至る入口のところと言えるのではないでしょうか。いやむしろ、本来のダイバーシティをめざすプロセスにおいては、無駄な回り道をしているという懸念すらあります。
女性ばかりのチームをつくったあと、そこからどこにつながっていくのでしょう。過去にそのような施策でマスコミを賑わせた企業は、その後いきいきと女性が活躍して企業業績を担うような会社になっているでしょうか。
どうしてもそのようには見えないのです。
■安易に使う「女性ならではの...」は危険
違いを活かす、と言いましたが、この男女の違いにおいてはたびたび誤解が生まれています。心理学や経済学、脳科学、生物学など、さまざまな分野の研究から、男性と女性とでは、性格や行動様式などに違いがあることがわかっています。
マッキンゼーが調査・分析してまとめたレポート「WOMEN MATTER 2」(2008年)には、男女のリーダーシップのとり方の違いについて興味深い整理がされています。
リーダーシップ行動を9項目に分けると、そのうち女性のほうが頻繁に発揮しているリーダーシップ5項目と、男性のほうが頻繁に発揮している2項目と、両者が同じように発揮している2項目とに分かれるのです。
■女性が発揮しているリーダーシップ
・人を育てる(people development)
・期待し褒める(expectations and rewards)
・ロールモデルとなる(role model)
・思考を促す(inspiration)
・参加型の意思決定をする(participative decision making)
■男性が発揮しているリーダーシップ
・管理し、修正する(control and corrective action)
・個人型の意思決定をする(individualistic decision making)
■両者が共通して発揮しているリーダーシップ
・知的刺激を与える(intellectual stimulation)
・効率的なコミュニケーションをとる(effi cient communication)
実感とも近い分析結果になっていて、参考になるのではないかと思います。
また労働政策研究・研修機構が、企業で働くミドルマネジャーに対して調査を行ったところ、課長相当職における男女の資質について次のようなことがわかりました。
女性が優位となる資質には「公私を問わず頼りにされることが多い」「どんな人ともコミュニケーションがとれる」があり、男性が優位となる資質には「物事をデータに基づき定量的に分析する」「論理的に人を説得する」があるということです。
これらの違いがあることをよく理解したうえで、あえて男女の混合チームをつくることが良い成果につながるのです。
ダイバーシティ経営企業100選に入選した会社のレポートを読んでいると、よく「女性ならではの......」という言葉に出会いました。たいていはそのあとに「感性」とか、「細やかさ」という言葉が続くのですが、これは本当に正しいのでしょうか。
男女差を活かすということは大事なのですが、「女性ならではの」と言われてしまうと、その言葉自体が男目線で、勝手な理想や思い込みに基づいているように思えてなりません。「女性ならではの感性」という言葉は、男女で異なる好みや流行などを指しているということならそう書けばいいですし、感性自体は男女差ではなく個人差がほとんどです。
女性だからといって誰もが細やかなわけでもないでしょう。周囲にいる一人ひとりの女性を思い浮かべてみてください。細やかな人もいれば、細かいことは気にしない人もいるはずです。細やかさとは女性ならではのものだというのは間違いだとすぐに気づくと思います。
男女が職場で不平等に扱われていたときの価値観を引きずらないように、細心の注意を払いながら、男女の差を活かしていきたいものです。そして、男女差以上に個人差が大きいことを前提として、忘れないようにしておきたいと思います。
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