大阪万博、当選の裏側と「建設費1250億円」の課題を猪瀬直樹氏に聞く《公式》

大塚和成です!!


 週刊SPA!

大阪万博、当選の裏側と「建設費1250億円」の課題を猪瀬直樹氏に聞く

これまで、「負の遺産」と称されてきた夢洲に、大広場「空」をイメージした万博会場が出現することになる

「こんだけみんなにいろんなことやってもらって、負けられへんって……。まぁ、これからの大阪はホントね、もっとようなるよ!!」

 11月23日(日本時間24日未明)、大阪府の松井一郎知事はそう歓喜の声を上げた――。

 2025年国際博覧会(万博)の開催国を決める博覧会国際事務局(BIE)総会がパリで開かれ、2度の投票の末、日本(大阪)がロシア(エカテリンブルク)とアゼルバイジャン(バクー)を抑え、見事、選出された。BIEの規定に基づく大規模な万博の開催は’05年の愛知万博以来。大阪で行われるのは1970年以来、実に55年ぶりとなる。

「確率は50%。最後までわからん」

 投票の前日までこう話していた松井知事だったが、それもそのはず。本来ならBIEへの分担金が未納で投票権がなかった40の国が、直前になって分担金を納付したため、ライバル国であるロシアが水面下で「肩代わり」し、その見返りにロシアへの指示を取り付けているのではないか? といった憶測が流れたからだ。だが、フタを開けてみたら、一回目の投票で日本は1位通過。ロシアとの決選投票でも92票を獲得し、61票のロシアを振り切った。

 2020年に東京五輪・パラリンピックが終われば、“五輪ロス”で日本経済に急ブレーキがかかると危惧されていたなか、2兆円の経済効果が見込まれる万博誘致に成功したことは快挙と言っていいだろう。今回、2020年の東京五輪招致が決定したときに都知事を務め、知事退任後は、大阪府・市の特別顧問として万博誘致の内側を見てきた作家の猪瀬直樹氏に話を聞いた。

――下馬評では混戦模様だったが、大阪は決選投票でロシアを引き離して勝利した。

猪瀬:2020東京五輪を勝ち取ったときの成功体験が、今回の誘致活動に有利に働いたのは間違いありません。「お・も・て・な・し」が当時の流行語大賞にも選出されるなど、五輪招致の際の最終プレゼンは世界基準で洗練されたものだったが、万博の誘致レースでもこの路線を踏襲し、さらにアップデートさせた印象です。今回、プレゼンを行った世耕弘成経産相は「世界中の人々の暮らしを守り、強靭にする実験室になる」と力強いメッセージを送った一方で、「大阪には寿司屋が1000軒、カラオケも多い」とユーモアも盛り込み、会場のウケは上々だった。こうしたプレゼンのクオリティひとつ取っても、五輪招致のときに得た成功経験が大いに寄与したのではないか。

――今回の誘致レースでも、水面下で立候補国同士による「ロビイング合戦」が繰り広げられた。

猪瀬:国際的な大規模イベントを引っ張ってくる際、大事なのがロビー活動です。五輪招致のときもそうだったが、立候補した都市は互いに熾烈なロビイングを仕掛けるので、昨日決まったことが今日は変わってしまう……。

 だから、「IOCのどの委員が今どこにいるのか?」といった情報を共有して、あくまで偶然を装って話しかけたり、食事をしたり、そういう“知恵”を絞ったアプローチが必要となってくるのです。総会の帰り道が“たまたま”同じ方向になったり、“たまたま”同じレストランで遭遇して、席が隣り合わせだったり……。そうやって、一つひとつ票を積み上げていかなければならない。

 もちろん、ロビイングの相手国との外交関係やODA(政府開発援助)の規模など、あらゆる情報がカギを握る。こうした膨大な情報を吸い上げるために、情報の中枢を構築して、どの委員がどんな行動をしてどんな影響を及ぼしたのか? 情報を収集するのと同時に、僕はIOC委員100人ほどの写真を集めて、顔と名前を頭に叩き込み、個別にロビイングを仕掛けました。

――’15年以来、大阪府・市の「特別顧問」に就任したが、万博誘致の戦略を内側からはどう見えていたか。

猪瀬:五輪招致でも、万博誘致でも、もっとも重要なのは「世論」です。五輪の招致活動を本格的に始める以前は、「1964年の東京五輪をもう一度」という空気こそあったものの、いまひとつ盛り上がりに欠けていました。ライバルのマドリードは、ラテン気質も手伝って非常に熱気があり、これに対抗するためにも、まずやらなければならなかったのが五輪開催の支持率を上げることだったのです。

 だから、僕は招致活動解禁日にロンドンで記者会見を開き、街中をランニングするパフォーマンスも披露した。立候補都市の首長が走れば、インパクトがあるのでメディアもニュースにしやすい。実際、海外メディアが反応してくれたことで、国内メディアも報じざるを得なくなったのです。これが功を奏して、招致活動がスタートした直後の支持率は70%となった。

 これに対し、大阪万博の支持率はNHKの世論調査によると今年3月の時点で45.7%……。どちらの調査結果も、開催地決定の約8か月前なので、やはり、地元大阪で盛り上がりに欠けていた感は否めません。松井知事や吉村洋文大阪市長は尽力していたが、(大阪府知事と大阪市長を務めていた)橋下徹さんほどの並外れた発信力を彼らに期待するのは酷ですし、大阪からの情報発信はローカルニュース扱いになってしまうというハンデもあった。

 先日、乙武洋匡さんがテレビで初めて義足をつけて歩く姿が話題となりましたが、番組を仕切っていたのは大阪万博の誘致アンバサダーを務めていたダウンタウンの松本人志さんだった。最新鋭の義足で万博のテーマにも繋がる話ですから、松本さんが悪いわけではなく、本来ならこうしたこともメディア戦略として利用してよかったのではないかと思います。

 ただ、今回手を挙げていたアゼルバイジャンのバクーは、大阪以上に支持が広がってなかったようです。僕の知る記者が現地入りした際、万博誘致のポスターさえ貼られておらず、市民の関心はほとんどなかったといいますから。

◆愛知万博では経済界が「成功」を後押しした

――決選投票で一騎打ちとなったエカテリンブルク擁するロシアは、プーチン大統領が誘致レースの陣頭指揮を執るなど「強敵」だった。

猪瀬:ロシアは4年前にソチ五輪、今年はサッカーW杯と、ビッグイベントを立て続けに開催するなど成功体験はあったが、最後は大阪が競り勝った。「高齢社会」という課題を、最先端テクノロジーやライフサイエンスで解決していこう――。大阪万博が掲げたテーマは、「成熟国家」である日本に相応しいものだったのではないか。

 2度目の東京五輪、2度目の大阪万博は、成熟国家だからこそ成し得ること。だからこそ、「初の開催」であることを武器にしたロシアやアゼルバイジャンに、「2度目」の大阪が悠々と勝てたわけです。これは世界が日本を成熟国家と認めたに等しく、高齢社会という課題解決型の万博は、日本が開催することに価値があるのです。

――今後は、約1250億円かかるとされる会場建設費をどのように確保するかも課題となる。国と大阪府・市、ならびに経済界で3分の1ずつ負担することで合意しているが、民間は400億円を捻出できるのか。

猪瀬:五輪は都市が開催主体なのに対して、万博は国が開催する。とはいえ、’05年の愛知万博は、トヨタ自動車会長の豊田章一郎さんが誘致決定時に経団連会長だったため、資金集めの「旗振り役」を務めており、地元経済界の貢献があった。そのため、入場者数は目標の1500万人を大きく上回る2204万人を数え、129億円の黒字になっています。国がバックにいるとはいえ、大したことはやってくれないので、首長が当事者意識をもって当たらなければならない。

 大阪の長所は、民間が誘致活動に力を入れているところ。歴史的にみても、江戸が武士の町だったのに対して、大坂は商人の町で、伝統的に民の力が大きいのです。歴史をひもとけば、東京(江戸)が、将軍が居を構える“官都”だったのに対して、経済が栄える“民都”だった大阪では、自由な発想から次々と新しいビジネスが生まれていたし、民間がボランティアや寄付でインフラを整備してきた歴史がある。こうした大阪人の気風や文化を活かせれば2025年の万博も成功に導けるはず。

 2020年の東京五輪後、万博が行われる2025年まで猶予期間が与えられたことも大きいが、大阪はインバウンドによる好景気の真っ只中であり、このうえ、開催地の夢洲にIR(統合型リゾート)を呼び込めば経済効果は絶大なものになるでしょうね。

 すでに関西圏はインバウンドの恩恵にあずかっており、’17年に関西を訪れた外国人観光客は1207万人。全国の4割に相当し、インバウンド消費額は1兆円を超えている。大阪は2024年にカジノを含むIRの開業を目指しており、今後も注目が集まるのは必至だ。

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/経済産業省

※『週刊SPA!』11月27日発売号「今週の顔」より

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【日本経済のOMM】大塚和成の日本経済の話

大塚和成です。世界で活躍する日本企業が増えていますね。 アメリカの日本の貿易に関する話題から、日本が世界の経済産業の一角となっていることをいち国民として感じています。日本経済の様々な気になる情報を紹介いたします。 この個人的なブログを通し、日本経済の話題に興味を持つ人が増えると嬉しいです。

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